雇用を守る
今朝の日経の「私の履歴書」の見出しは「雇用を守る」。著者は東レの名誉会長。
工場長時代に、会社が業績悪化。会社の人員削減計画に基づいて、自分の工場も従業員を毎年200~300人ずつ削減することを余儀なくされた。
「しかし彼らの多くは地元で生まれ育ち、工場から遠くないところに生活の場がある。できれば他工場や海外への転勤を望まない彼らの雇用も守りたい。」と著者は考えた。
「50代に達した従業員の人件費は高い。一方で体力的に3交代勤務は厳しい。家も持ち、子どもが手から離れた年代の従業員が求めているのは、何より『安定』ではないだろうか。会社の目線ではなく、従業員の立場になって考えると、どうしてもそこに行き着くのだ。」
その工場では、数年前に多角化による事業拡大のための子会社を設立していた。「子会社を雇用の受け皿」とするアイデアが浮かんだ。「これなら工場長の一存でできる。」
労働組合と協議を重ねて、できたのが以下のスキーム。
・ 親会社を退職して、子会社に転籍すると63歳まで雇用する。
(親会社は60歳定年)
・ 給料は2割ダウンとする。
・ 本人の合意を前提とし、肩たたきはしない。
「こうして2,800人いた従業員を最低限の痛みで1,000人にまで減らした愛媛工場の取り組みは東レの各工場、拠点にも展開されていった。」
これは、1970年代の話であるが、現在も同じように、業績悪化に際して、固定費を削減する必要性が生じるケースは数多く見られる。会社としての業績改善のための固定費削減と、雇用の確保は、短期的には相反する命題となる。しかし、長期的にみると、雇用確保に真剣に取り組む経営者の姿勢は、従業員のロイヤリティ向上となって、企業の業績に貢献するものである。
雇用確保と従業員重視の日本型経営が会社へのロイヤリティの醸成につながり、長期にわたって、製造業の競争力の源泉であったことは間違いないのだろう。
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